2017年8月29日火曜日

おんらが村の工賃は上がったのか?で今いくらなの?


先日、茨城県の平成29年度工賃向上の研修としてうちの事業所に視察に来てくれました。
8月23日と24日の2日間で、県職員と各事業所の方々が総勢40人くらいの方の参加です。

うちに来た理由として、実は昨年度に工賃向上研修に参加したことがきっかけ。

おんらが村の平均工賃が前年度よりも下がってしまったこと、県から参加するようにとのお達しがあったということで参加することにした。
そこで県の工賃向上アドバイザーに入ってもらい、工賃向上計画を立てて実行。その結果が良かったということで、視察先に選ばれたということです。

ちなみに、前回書いた工賃向上研修のブログ。
~ B型事業所の工賃は上げないといけない。 ~

視察では現場を見て頂くことと、昨年のアドバイザー派遣での取組と成果等について報告をするという内容です。



せっかく作ったので、その内容を公開していこうと思う。

まず、工賃向上アドバイザーを入れる前に工賃向上研修があった。
研修では、会計について就労支援会計の基礎を学び、粗利益、経費、営業利益等、細かく統計を取り戦略をとっていく必要性があることを知る。
まあ。経営者としてはあたり前だけどね(笑)
それに、売り上げの算出についてはシビアに教わった。作業ごとに収支評価を算出して、どこに無駄があり、どこを拡充するのか?その算出の必要性、その後の動き等を検討して学んだ。
現在どの地点にいて、どこまで工賃を目標とするのか?逆算して事業を見直していく必要がある。

その研修で特に強く感じたのは、工賃を月3,000円以上を上げるための工賃基準の見直しを行う手もあるというところ。

一般の人から見れば愕然とする数字だと思う。

それでも、達成できない事業所も多いのが現実。

うちも月に5日とか、毎日来れない人は工賃が少なかったりする。

大体の事業所は、収入ベースで月ごとに時給や日給等を計算して、工賃を支給していると思う。
(全部ではないですよ。)
そうすると、収入が上がらなければもちろん工賃も上がらない。だけど、収入を上げようと思ってもなかなか上がらないという結果になる。

そのため、うちとしては収入ベースではなく、平均工賃の目標値で工賃基準を見直すためにアドバイザーに入ってもらい、工賃規定を改定した。これは完全な赤字覚悟だ。

改定の中で決めていたことは、来る日数が少なくても月の工賃が3,000円以上になることを前提として、作業評価基準を細かく設定して、その基準に合わせて時給と日給、手当を計算して支給するという内容にした。

(以下、ざっくりとした基準表)
 

評価基準は、遅刻や欠勤、挨拶や体調管理、コミュニケーションや報連相などの基本評価と、各作業分野ごとの作業能力評価をもとに作成。
評価をランクごとに分けて時給を作成して、それに日給と手当を加算して一月の工賃として支給する。


 

で、実践の成果はどうか?

(平成28年度3月24日の工賃向上研修の発表時の結果)
・これまでの工賃基準 2月分のB型平均工賃 5741円
・4月からの新基準導入後 4月からB型平均工賃 8996円  約3,000円UP

ただし、目標ベースでの工賃支給のため作業収支は赤字
そのため、工賃を上げるという目標をスタッフを含めてこれまで以上に意識統一を図れた。そして、新作業の導入や既存の作業の賃金の相談等を積極的に行うようになり、新作業も増えた。
収入も半年くらいには改善できるのではないかと予想している。


その後の結果は?

(発表してから現在の結果について)
・収益を上げやすい軽作業(委託)の改善をさらに行う。軽作業の現状分析を毎月行う。
・それをもとに週間目標を細かく設定。業務内容も利益の高いものにシフトした。
・その結果、4月から6月までは赤字での運営だったが、7月には収益が改善
 (6万円のプラスになる。)
・B型の平均工賃は、1万円を突破。(¥10,155)

1万円を突破したのだ \(*T▽T*)/

めでたしめでたし。


と   いくわけない… (´ω`)トホホ…


茨城県の平成27年度B型事業所の平均工賃は、¥11,810 なり。

うちの現状は、¥10,155。差額は、-¥1,655

おしい、実に惜しい。けれどもまだまだ低い。


なので、今年度で平均越え

来年度には、¥18,000までにはもっていきたい。



B型事業所で収入を上げていくにはあらゆるビジネスに参入していかないといけない。
利益を出していくビジネスは、支援が1番の福祉者にはどこか遠い存在なのだ。
その距離感を埋めていくためにも、福祉関係外の集まりにも積極的に参加して、異業種の方々との交流や連携を作っていくことが必要だと考えているので、これからも積極的に出歩きます。


皆さんのところにも顔をだすかもしれないので、よろしくお願いします。


P.S. 人見知りなので、優しく接してください。


~SMSCの活動に興味を持ってくださった方へ。~

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2017年8月10日木曜日

講演会で話したてらこむの事例報告


これは前回の5周年記念講演会で話した事例報告の内容です。

【内容】
①なぜ学習支援を始めたのか?
②貧困の現状
③てらこむの目的と内容
④事例
⑤効果と課題
⑥今後の展開


①なぜ学習支援を始めたのか?
SMSCは、これまで障害福祉サービス事業を通じて様々な精神障害のある方々の支援を行ってきた。
その中で強く感じたこととして、彼らの背景には様々な社会問題があるということ。
それぞれがひきこもりやいじめ、虐待や暴力、雇用やハラスメント、高齢化や自殺など様々な問題を抱えていた。
それらの様々な問題を抱えながらも、さらにその奥には多くの方が共通して持っている問題として貧困があった。彼らとの関りを通して、貧困が故に他の社会問題も付随して起きているというケースが多いと感じた。

現場での彼らとの関りを通して感じた貧困という問題。

貧困問題を少しでも解決できればその他の様々な社会問題も改善していけるのではないか?
精神障害者が減らせるのではないか?
社会復帰をできる人が増えるのではないか?

という問題意識が生まれてきたことがてらこむを始めたきっかけです。


②貧困の現状
実際、貧困問題ってういう状況なのか?

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※ここからは、日本財団の子どもの貧困対策より一部抜粋しています。
http://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/ending_child_poverty/

日本の子どもの貧困率は今、OECD加盟国の中で最悪の水準にあります。子どもの貧困率は、1980年代から一貫して上昇傾向にあり、今日では実に6人に1人の子どもが貧困状態にあるとされている。

厚生労働省の国民生活基礎調査を基に作成した子どもの相対的貧困率の推移グラフ。1985年に10.9%であった子どもの貧困率は、2012年には16.3%と、過去最高に達しました。

子どもの貧困率とは、相対的貧困の状態にある18歳未満の子どもの割合を指す。国民を可処分所得の順に並べ、その真ん中の人の半分以下しか所得がない状態を相対的貧困と呼び、親子2人世帯の場合は月額およそ14万円以下(公的給付含む)の所得しかないことになる。
こうした世帯で育つ子どもは、医療や食事、学習、進学などの面で極めて不利な状況に置かれ、将来も貧困から抜け出せない傾向があることが明らかになりつつある。

○こどもの貧困に関する日本財団の調査研究 ~日本財団「子どもの貧困の社会的損失推計」レポート~

日本財団は、子どもの貧困の放置による経済的影響に関する日本初の推計を行いました。
この調査では、子ども時代の経済格差が教育格差を生み、将来の所得格差につながるという想定のもと、現状を放置した場合と、子どもの教育格差を改善する対策を行った場合の2つのシナリオを比較したものです。
わが国では、最終学歴や正規・非正規といった就業形態による所得の格差が存在するため、教育格差が生涯所得に大きく影響します。

子どもの貧困がもたらす社会的損失(15歳(2013年時点)の1学年のみ)

改善シナリオでは、現状を放置した場合に比べ、大卒者の増加や就業形態の改善によって生涯所得が増加するほか、所得増に伴い個人による税・社会保障費用の支払いが増えることで、国の財政負担がその分軽減されることになります。
この差分を社会的損失として算出すると、子どもの貧困を放置した場合、わずか1学年あたりでも経済損失は約2.9兆円に達し、政府の財政負担は1.1兆円増加するという推計結果が得られました。
この結果から、子どもの貧困が、日本経済や国民一人ひとりに甚大な影響を及ぼす問題であることが明らかになるとともに、対策を講じた場合には極めて大きなリターンを期待できることが示唆されました。

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③てらこむの目的と内容
【目的】
(1)個々の学習意欲や能力に合わせて、宿題や受験対策等の個別指導の学習支援を行うことで、貧困
   の状態にある教育格差を改善する。
(2)居場所作りやコミュニケーション、日常生活技術訓練を行うことで、貧困が故に獲得できなかっ
   た日常生活技術のスキルや社会生活技能のスキルを改善する。
(3)相談支援を中心とした生活環境の改善などの支援(社会福祉援助技術)を行うことで、貧困状態
   にある生活基盤の改善する。

【内容】
 生活困窮者世帯の子どもの学習支援事業。
(日時)  毎週土曜日 13:00~17:00
(場所)  市内の公共施設
(対象者) 稲敷市内の生活保護世帯または準用保護世帯の子ども
(1)学習支援
   学習ボランティアスタッフを中心に、個々の授業の復習や宿題などの指導を中心に子どもたちの
   勉強をサポートします。
(2)レクリエーション
   レクリエーションを通して人との交流やコミュニケーション、挨拶やマナーなどの体験を通した
   学びを支援します。
(3)アウトリーチ
   家庭訪問を行い、本人の学習支援活動への参加や継続のための支援、またご家族の悩みや生活技
   能・環境調整等のソーシャルワークを行います。
(4)食事提供
   フードバンクと連携して、軽食やおやつなどの食事提供支援を行います。



【利用までの流れ】
・稲敷市の生活福祉課に相談する。
 もしくは特定非営利活動法人SMSC事務局に相談する。
・市の担当者が訪問相談。
・市で調査して対象者かどうかの判定を行う。
・市へ利用申し込みを行う。
・SMSCのスタッフの訪問相談と利用申し込みを行う。
・利用開始

【学習支援実施状況】
(運営状況】
 責任者1名 7月より支援員1名 ボランティア 12名登録
(4月)
 子ども参加人数 平均5,6人 ボランティアスタッフ 平均6,3人
(5月)
 子ども参加人数 平均6,2人 ボランティアスタッフ 平均6,2人
(6月)
 子ども参加人数 平均4人 ボランティアスタッフ 平均5,5人

④事例

※ちなみにこの事例は少しづつフィクションです。個人情報もあるので。
 似たようなケースがあるということです。

【Aくんの事例】
 A君の親は未婚の母。本人の父親は認知はしているが、親子関係はなく居場所も分からない。また母親は現在、父親とは別の男性と他県にて暮らしている。そのため本人は、母親の母親(本人の祖母)の扶養として一緒に生活している。扶養している祖母は、生活保護世帯で他にも子どもがいる。
 生活保護ワーカーの紹介でAくんと会う。
 小学校低学年でとても内気で人見知り。保育園あたりから登校拒否しており、現在も登校拒否中。日中は祖母が仕事しているので、本人は家で一人で生活している。
 母親の養育能力がなかったのであまり入浴していない。トイレトレーニングもしてないため小学低学年になってもおむつで生活していた。
 何度か自宅訪問して、てらこむの利用となる。
 本人は内気であったが、母親の兄弟(本人から見るとおじ中学生)と通学し、レクリエーションを通して他の利用者と仲良くなる。
 オムツも取れるようになる。
 その後もてらこむに参加。現在は、給食時間には学校に行って給食を食べ、図書館などを利用するという生活までできるようになった。

【Bくんの事例】
 Bくんは母子家庭で、3人兄弟の長男。東京に住んでいたが、父親がDVのため離婚し、こちらで生活を始める。生活保護世帯であり母親が虐待ケースとして市も注意して支援している状態。
 生活保護ワーカーの紹介でBくんと会う。この家庭からは数人の子どもがてらこむに通っている。
 Bくんは中学校高学年。不登校でひきこもり状態であったが、定期的に通うことで、修学旅行前から学校に通うことができるようになった。
 その後も学校には通学しており、現在は高校受験に向けて、てらこむにて週1回3時間くらい勉強をしている。
 目標が見えたことで、勉強に対する姿勢、やる気が上がり毎回集中して勉強している。
 虐待ケースについては、現在も注意して経過観察中である。

※ここで勘違いしないでほしい。
これを見て一方的に親が悪いと思ってしまうかも知れないが、その親自身も貧困の連鎖の渦中にいる被害者であるということ。そのため、どこで止めるかというのが重要だ。貧困問題に目が行き始めている今だからこそ、連鎖を断ち切っていくチャンスでもある。



⑤効果と課題
【効果】
・セーフティーネットの役割がある。
・民生委員や児童委員との連携ができるようになってきた。
・不登校者、不登校気味の利用者さんが多かったが学校に通えるようになってきている。
・学習に対する意欲が上がってきている。
・訪問相談を行うことで家庭状況の把握や通学率の向上、継続した支援ができるようになった。
・行政サイドだけでなく、民間のてらこむのスタッフが関わることで、より深い情報が得られるように
 なり、その内容に合わせて連携した対応が取れるようになった。
・生活困窮者支援調整会議が始まった。
 (生活福祉課、子ども家庭科、社会福祉協議会の家計相談の職員、てらこむスタッフ)
・ご飯が食べられる。
・友達が増える。
・先生以外の大人に相談ができる。

【課題】
・ボランティアが集まらない。
・ボランティアスタッフの得意分野、指導レベルの差がある。
・土曜日の運営なので、学校へ行けて遊びに行けるようになり通学率が下がってきた。
・平日にやる必要もある。
・交通機関がなく、通えない。
・やる気のある子、やる気のない子の2極化が進んでいる。
 そのためやる気のある子に対してのより専門性の高い学習支援と、やる気のない子に対しての学習に
 意識を向けられる支援の個別対応の支援がより必要になる。

【今後の検討・展開】
・子どもたちの勉強に対する意欲が違うので、勉強集中型クラスと、レクリエーション特化型クラスに
 分けて運営していく。
・ボランティアスタッフの指導力に差があるので、ICT教育を導入する。
・市内は広いので、市内の数カ所で平日毎週1回で開催していく。
・ご飯があまり食べれない子もいるので、子ども食堂も開催していく。


てらこむの生徒さんが、隠れてこそこそと作っていた。
「これをみんなに配れ。」と。
名刺だね、多分。この子にはそんな風に見えているんだな~。

恥ずかしいけど配ったよ(笑)たくさん作ってくれて、ありがと。

以上。


ボランティアしたいと思ってくれる方は、是非是非ご連絡ください!


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地方で起こす "collective impact"

今年の1月より市より委嘱を受けた、生活支援コーディネーター(SC)というお仕事。 順調に活動を始めて3ヶ月が経ちました。 長時間ではないにせよ、月に8日活動したのでこれまで24日くらい業務しています。 現在どういう活動をしているかというと、地域住民が主体となって...